荒川光のブログ

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運転代行の運転手が嫌がるお客様ワースト1

ワースト10企画にしようかとも思ったのですが、2位以下は順位を付けるのが難しく、しかも誰でも容易に想像できる内容になっちゃうと思いますので割愛し、今回はワースト1の内容にしぼってお伝えしようと思います。

 

その前に、なぜこの記事を書くことになったのか? 一体どこから運転代行なんて話が出てきたのかということを簡単にご説明しますと、それは私が運転代行の運転手をしているからなのです。

運転手といってもお客様の車(以下客車)を運転するのではなく、後ろをついていく代行会社の社用車(以下随伴車)の運転手なのですが。

 

毎日仕事をするなかでいろんなお客様に出会います。そしてどんな業種においてもそうだと思いますが、やはり嫌なお客様というのはいるものなのです。

そこで今日は運転代行業における嫌なお客様というものをみなさんにお伝えして、自分がそういう存在にならないための参考にしていただければという気持ちと、時と場合によってわざと嫌な客になる必要が生じた際には、上手なサジ加減で自分が望んだ程度に嫌な客になるために役立てていただきたい。そんな動機でこの記事を書いてみました。

 
ここで運転代行業というものをご存知ない方のために、簡単に説明をさせていただこうと思うのですが、「そんなの抜きにして早く本題に入れ!」とおっしゃる方は次の説明の段落を飛ばしてその次から読んでいただければと思います。なにしろ現代人は忙しく、長い前書きなど読んでいる暇はないのですからね。それこそ時間泥棒なんて言われちゃいます。
 
運転代行業とは、主に飲酒によって(他の理由による場合もありますが)自分で車を運転できない状態のお客様に代わって車を運転し、希望される場所までとどける仕事です。
 
お客様本人が運転代行会社に電話をかけて代行車を呼ぶ場合と、飲食店がお客様からの依頼を受けて任意の運転代行業者を呼ぶ場合とがほとんどです。
 
お客様の車にお客様を乗せて、運転代行会社のドライバーがその車を運転します。
随伴車がトリップメーターで走行距離を計りながら客車を追走し、到着地で集金したり領収書を切ったりします。
その後客車を運転したドライバーを乗せて、次のお客様のお迎え先に向かう。このような業態が一般的だろうと思います。
 
そして私は先にも書いたように客車を運転するドライバーではなく、随伴車を運転するドライバーとして働いているのです。
なぜ客車を運転しないのか? それは客車を運転するには普通自動車第2種免許が必要なのですが、私は残念ながら1種免許しか持っていないというのがその理由のほとんど、というかすべてです。
 
さて、それでは注目のワースト1、運転代行の運転手が最も嫌がるお客様とは一体どんなお客様なのでしょうか?
 
それは、「なかなか店から出てこないお客様」です。
 
あれ、散々もったいをつけられた挙句にこんな結果で、拍子抜けしましたか? 
でもこれは私自身の独断と偏見ではなく、大方の運転手の意見でもあるのです。
 
例えば23:30にどこそこのお店に来てくれという依頼を受けて、その時間にお店に到着したとしましょう。運転手はお店に入り、到着した旨を店員さんもしくはお客様本人に伝えます。そして店の外でお客様が出てくるのを立って待っているのです。
 
お客様にはすぐに出てきてもらいたいものです。この仕事をさっさと終わらせて早く次の仕事先に向かいたいという気持ちもありますが、それはお客様に早く出てきてもらいたい理由の二番目です。
 
一番の理由は、店の前で家来か子分のように待たされているという屈辱的な気分を味わわされることが嫌だからなのです。
今のような寒い時期の真夜中、吹きっさらしの駐車場で手持ち無沙汰に突っ立って待っているのはつらいものです。
代行会社によってはお客様が出でくるまでクルマの中で待っているということもあるかもしれませんが、私が勤める会社ではそれはお客様に失礼にあたるとして、クルマの外でガタガタ震えなが待っていなければならないのです。
 
ガラス窓を通して見える店内は暖かそうで、楽しそうな男女が食べたり飲んだりしながら充実した時間を過ごしています。
彼らは仕事が終わった後、仲間や家族や恋人とこの場所に集い、充実した時間を過ごしているのです。そのように過ごすだけの時間もお金もある人たちなのです。
 
一方で運転代行の運転手たちというのは、私の知る限りではそれを専業でやっている人は少なく、昼間は別の仕事をしています。そして昼間の仕事が終わった後、つまり普通の人たちがこうやって過ごしている時間に運転手としてアルバイトをしている人が多いのです。
夜中の3時や4時まで働いて、その日の朝7時に起きて会社に行かなければならないというのに。
そんな生活をしなければならなくなった事情は人それぞれですが、お金に余裕があるのであれば、一部の奇特な人を除いてこんな生活を好んでするものではないのです。
 
お店に到着してからもう10分が経ちました。お客様はまだ出てきません。
到着後7~8分が経過した時点で一度店内にお客様を急かしに入ることもあるのですが、それも結構気が引ける仕事なのです。せっかくの団欒に終止符をつきつけに行くのですから。酔いが回って上機嫌のお客様に「もう宴は終わりだ、さっさと出て来い」と告げに行くのです。特に何度も利用してくださっているお得意様であればなおのこと、お店から引きずり出すような行為はしたくありません。
 
「こんなに待たせるんだったら23:30ではなく始めっから23:45に到着するように呼べばいいじゃないか」と思うのですが、こういうお客様は23:45に到着しても0:00まで出てこないものです。
かくして運転手は寒風の中を立ち続けます。まるで何かの罰を受けてでもいるように。
 
自分があまりつらそうな態度を取っていないかどうかにも警戒が必要です。自分自身を客観視したときに、つらそうにしている自分の姿はとてもみじめに見えてしまいます。
 
店の入口のドア一枚を隔てて天国と地獄。店の外では凍えた運転手が店内の光景を想像して羨ましがりながら、風の中をマヌケみたいにぼけっと突っ立って、ご主人様が出てくるのを待っている忠実な犬さながらに「待つ」という職務を遂行しているのです。
 
「自分の姿が、眩しいショーウィンドウの向こうの決して手に入らない商品を、うらめしげに眺めている貧乏人のように見えないように」と彼はとても気を使います。そこで彼は寒そうに肩をすくめたりせず、昂然と胸を張って平気な態度を装うのです。
 
ようやくお客様が出てきました。待たせたことを悪びれる様子もなく、告げられた行き先は3Km未満の1000円で帰れる場所でした。「お客さん、あんまり運転手をいじめないでくださいな」。
 
横柄な口調で運転手に話しかけるお客様には何の悪気もありません。代行の運転手なんて待たせて普通、こっちは金を払ってるんだからという感覚なのでしょう。もしかしたら本当にそれが普通で、私の自意識や変なプライドの方が異常なのかもしれませんね。
 
そして運転代行業以外の別のサービス業の場において、今度は私が客の立場として自分の言動に無自覚で、それに従事している人にとって嫌な客になっているかもしれないなとも思います。
 
例えばコンビニで時々雑誌の立ち読みをすることがあるのですが、その雑誌を買わずに帰る客というのは店員にどう映っているのでしょうか?
私はコンビニで働いたことがないので店員さんの気持ちは想像するしかないのですが、「タダで雑誌を読まれた」ことは「盗まれた」ことに近い印象なのでしょうか?
私にとっては少し立ち読みするくらいは「普通」のことで、だから何の悪気もなく立ち読みをしていたのですが、それは実は普通ではないことなのかもしれません。
 
無知ゆえに人に迷惑をかけながら生きている存在だってことを自覚して、だからお互いに許しあいましょうよってことですかね。
 
星空の下で、出てこないお客様を待ちながら、少し穏やかな気持ちでこんなことを考えたりしたのでした。
  

 

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