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荒川光のブログ

日々の生活のなかで感じたこと、思ったこと、考えたことを気軽に書いていくブログです。

運転代行業の世界 ~追走の技術 その1 出発時の注意~

運転代行業で必要とされるスキルを、業界歴1年(すみません)の私が紹介していきます。

 

今まさに現役で運転代行の仕事をされている方も、これからこの仕事に就こうと考えていらっしゃる方も、客として利用する機会が多い方も、はたまた、たまたま間違えてクリックしてしまってこのページに来たという方も、ぜひ知られざる運転代行業の世界に触れてみてください。

 

今日はお客様の車(以下「客車」)を代行会社の車(以下「随伴車」)が追走していくにあたっての注意点などを書いていきます。

 

ところで、追走の出発から到着までの過程で最も注意を要する場面はどこでしょうか? 

これは出発であると私は考えます。もちろん異論もあるでしょう。しかし、私が随伴車の運転をしていて一番緊張するのは出発の瞬間です。

 

では出発時にどんな危険が潜んでいるのか? 何に注意が必要なのでしょうか?

まず一つ目は、客車と一般の車両とを間違えてしまわないように注意しなければならないということです。そんなこと当たり前だと思われるかもしれませんが、これは非常に重要な点です。

 

他に車の停まっていないガラガラの駐車場から客車が出発し、すぐ隣に停まっていた随伴車が後を追って出発するという場合であれば間違えようはないのですが、混雑した駐車場の場合や、道路上で待機している随伴車の横を客車が走り過ぎるタイミングで、随伴車も出発するなどという時に、一般の車を客車と勘違いして追い掛けて行ってしまうというウソのようなミスが時々、いやごくたまに起こることがあります。

客車のドライバーはホーンを鳴らす、パッシングする、手を振るなど、状況に応じて合図を送って客車であることを随伴車に伝えますが、様々な事情でそれが伝わらないことがあるものなのです。昼間であれば起こりえないようなことも、夜には起こってしまうということもあります。

 

随伴車のドライバーが客車の車種、色、できればナンバーなどを出発前に確認しておければ良いのですが、それが許されない状況も多々あり、ホーンを鳴らして横を通り過ぎる車を客車とみなして追い掛けていかなければならないということもあるのです。

 

私なども、信号待ちで停まったときに車を降りて、前に停まっている車が客車かどうか心配で見に行ったという経験が何度もあります。もし間違えたままその人の家まで付いて行ったりしたら、なんて考えると恐ろしくて震えてきます。でも、今夜も日本中を走っている随伴車の中には、そんな車の一台や二台あってもおかしくありません。それくらい有りがちな失敗なのです。

ですので間違いなく客車であることを確信して追走するために、出発の瞬間には最大の注意を払わなければなりません。

 

二つ目には、出発時には事故のリスクが高くなるということを挙げておきます。

 

駐車場から道路に出る場合で、例えば片側1車線ずつの道路に右折で出るという場合を考えてみましょう。

頭の中でイメージしてみてください。駐車場の出口で客車が右ウィンカーを出して停止して、左右からの車の流れが途切れるのを待っています。今右からは車が来ていません。左からは車が何台か来ていますが、1台やり過ごせば次の車まで車間距離があり、客車1台なら出ることができます。しかし随伴車と2台連続して出るとなると難しいという状況です。

この状況では客車は出発しないことが多いです。2台連続して出た方が途中ではぐれたりするリスクが減るからです。

しかし今1台だけでも出ておかなければ次に出られる機会はなかなかおとずれないだろうという道路状況の場合や、酔っ払いの客がドライバーを急かして「早く出ろ」などと言った場合には、出発する客車のドライバーもいます。

随伴車はこのような状況では、できる限り後に続いて出たいものです。先に出た客車が途中で停まって待っていてくれればいいのですが、左に寄って停止できないような道路では随分先まで行ってしまうこともあるからです。そして無理をして後を追って出た随伴車が事故を起こすというケースが多いのです。

 

今挙げたのは1つの例ですが、実際には様々な状況があり、時間帯によっても天候によっても判断は変わってきます。すぐ先がカーブになっていて車が来ているのかどうか分かりにくいとか、非常にスピードを出して走る車が多い道路だとか、考慮しなければならない材料はその都度違いますので、正確で速い判断が必要になります。

 

無事に道路に出て、2台が前後に並んだ状態で走れるようになればホッと一安心といったところです。

 

もう一つ、運転上の注意とは違いますが、お客様のお帰り先を尋ねて、その情報を2人のドライバーが共有する上で注意しなければならないことがあります。

一般的にはお客様にお帰り先を尋ねるのは客車のドライバーだと思います。それを随伴車のドライバーに伝える時に、離れたところから大声で目的地を言う人がいます。その場にお客様と代行のドライバーしかいない場合にはそれでもかまわないかもしれませんが、周りに人がいる場合には、行き先を周囲に聞かれないように配慮する必要があります。

その場にいる人たちに自宅の場所を知られたくないという人もいますし、仲間と飲食店を出て解散した後、自分だけ家に帰らずに別の場所へ行くような時に、それを仲間に知られたくないという人もいます。

また飲み屋の女の子が代行を使って帰宅するような時に、店の客がいるそばで行き先を言うと、それがその女の子の自宅だと店の客に知られてしまうので、それを嫌がる人もいます。もちろん自宅の番地までは分かりませんが、どこの町かぐらいは特定されてしまう可能性があるからです。

中には最初に嘘の行き先をドライバーに告げて車に乗り込み、その後本当の行き先を車内で伝えるお客様もいらっしゃいます。その場合、随伴車のドライバーにしてみれば、聞いていた行き先とは違う方向へ客車が走っていくので、最終的にどこへ向かっているのか分からないままついていくということになります。

 

客車のドライバーが随伴車のドライバーに「お客様のお帰り先は○○町です」と伝えるだけのことなのですが、ちょっとした配慮が足りなかったばかりにトラブルに発展するケースもありますので、よく考えて行動しなければなりません。

「お客様のお帰り先」は慎重に取り扱わなければならない個人情報だと認識することが必要です。

 

そんなわけで、今日は出発時の注意点についてお話しました。

最後まで読んでくださった方々、どうもありがとうございました。途中までの方も、ありがとう。

 

 

携帯電話の機種変更をしようとしたがローンが通らず泣いて帰ってきた話

携帯電話のショップに勤めている知人から電話があったのが1週間前のこと。なんでも「助けてほしい」とのことで、携帯電話の機種変更をすることになりました。もう10年も前から彼のところで何台も携帯電話を買い替えている私なのです。今使っている携帯は3年ほど前にやはり彼のところで購入したもので、今のところ何の不便も不都合もなく使い続けています。

次々に新しい機種が発売され、話題となり、多くの人々が競って最新機種に買い替えていることを、私もニュースなどで見聞きして知っているのですが、私自身は携帯電話が備えている豊富な機能のうちのごく一部しか利用しておらず、キャパの小さい私には同じくキャパの小さい携帯電話がちょうど良いと考えて、今の機種を愛着を持って毎日使っていたのです。

しかしながら、ショップの店員さんにもいろいろな事情があるのでしょう。毎月の売上げ目標だとか、壁に貼られた営業成績の棒グラフだとか・・・。そういう胃をキュッとしめつけられるような暴力的な諸々の事情が、彼をして私に声を掛けさせたのに違いありません。

 

今の毎月の支払い額とそんなに変わらない金額で新しい機種を持てるとのことで、特別「最新機種アレルギー」でも「古物マニア」でもない私は、機種変更することを快諾しました。友人はもとより知人すら少ない私にとって、誰かが頼りにしてくれるということは、たとえそれが営業活動としておこなわれているのだと知っていても嬉しいものなのです。

 

ただ私には一つ懸念されることがありました。こんなところで告白するのも恥ずかしいのですが、実は私は様々な事情により、ローンを組めない状況にあるのです。世間で言うところの、いわゆる「ブラック」というやつです。どうしてこんなことになってしまったのかについてはまた別の機会に譲る(かもしれない)として、とにかく現在の私はローン契約を結ぶことは不可能な状態なのです。

ショップ店員の知人にもそのことを電話で伝えました。しかし数日後に彼から連絡があり、私が新しい携帯を分割払いで購入することは可能だと言うではありませんか。そんなことがはたしてあるのだろうかといぶかしく思いながらも、それではこの機会に機種変更をしてしまおうということで、日時を決めて携帯ショップへと赴きました。

 

ショップに到着して、久しぶりに会う知人と挨拶を交わした後、私はカウンターに案内されました。かわいい女性の店員さんがその日の私の担当でした。

その店員さんに相談しながら新しい機種の種類を決めたり、色や、画面の大きさや、データの容量を選んだりしました。電話帳やメール内容などのデータを新機種に移すやり方を教わったり、入っている写真はどうするかだとか、リセットがどうだとか、今使っている機種の下取り額だとか、たまっているポイントがいくら使えるかだとか、料金プランの変更はないかだとか、いろいろいろいろ・・・。

 

店員さんが私の携帯を操作している最中に、他人に、いわんや女性の店員さんに見られると非常によろしくない写真が画面に出てきて、一瞬で私が取り上げてうまくごまかし、冷や汗をぬぐったりなどという商談事故をも乗り越え、小一時間を経てようやく契約の運びとなりました。

そして、この後その日最大の山場を迎えることになるのですが、それはひと言でいうと、最後の最後になって、私がやはりローン払い不可能であることが分かったということです。そんなことだろうと思ってたという気持ちで、そんなにショックはありませんでしたが、それなりに落胆したことは事実です。

その私とは対照的に、店員さんは現金で一括払いをした場合の金額をすぐに算出して「63000円になりますがどうされますか?」と事もなげにきいてきました。もちろん本気で尋ねているわけではないでしょう。答えは分かっているはず。

そんな大金があるはずもない私は考える必要もなく即答できるのですが、ちっぽけなプライドが「う~ん、どうしようかなぁ」などと考える振りを私に強いるのです。完全ブラックな、いわば犯罪者に近いような人間になんのプライドだと、二重に自分を恥じながら、店員さんが期待している通りに答えました。店員さんと私とで短い芝居を演じたわけです。

 

このようにして辱めを受けた私は、しかし1時間も時間を取らせてしまったことを店員に詫び、その卑屈さにさらに自己嫌悪をつのらせて、知人に挨拶をして早々に店を出ました。数日前にはローンが組めるという話だったのに、どういう経緯でこうなったのかということは尋ねもせずに。

一番悪いのはもちろんこんな体たらくな私自身ですが、二番目に悪いのはそんな私をそっとしておいてくれなかった知人なのです。

「悪質なイタズラかよ!」と私は心の中でつぶやきました。ローンを組めるなんていう電話をよこしたことをです。ブスに告白する罰ゲームなのに、喜んで、舞い上がって、そのあとガッカリさせられた女の子みたいな気分です。

 

その夜家に帰って、コンビニで買った500円くらいの赤ワインを飲んで少し酔った私は、自分の携帯に向かってお道化た口調で言ってみました。

「ゴメンよ、まだまだ元気なお前を、新しいのに替えようなんて、バカな考えを起こしてさ。一生使うから、心配すんな」と。

こんなクサいセリフを囁いている自分が、猫に話し掛けているより異常っぽく思えて、でもなんだかモヤモヤが吹っ切れたようなさっぱりした気分になって、多分というか絶対にそれはアルコールのせいだと分かっているのだけど、とてもいい気分になって、「あー良かった、ローン通らなくて! ヘッヘッヘッ」くらいの気持ちになって、幸せに眠りにつきました。というオチでした。

めでたしめでたし。

運転代行の運転手が嫌がるお客様ワースト1

ワースト10企画にしようかとも思ったのですが、2位以下は順位を付けるのが難しく、しかも誰でも容易に想像できる内容になっちゃうと思いますので割愛し、今回はワースト1の内容にしぼってお伝えしようと思います。

 

その前に、なぜこの記事を書くことになったのか? 一体どこから運転代行なんて話が出てきたのかということを簡単にご説明しますと、それは私が運転代行の運転手をしているからなのです。運転手といってもお客様の車を運転するのではなく、後ろをついていく車の、つまり代行会社の社用車の運転手なのですが。

毎日仕事をするなかでいろんなお客様に出会います。そしてどんな業種においてもそうだと思いますが、やはり嫌なお客様というのはいるものなのです。そこで今日は運転代行業における嫌なお客様というものをみなさんにお伝えして、自分がそういう存在にならないための参考にしていただければという気持ちと、時と場合によってわざと嫌な客になる必要が生じた際には、上手なサジ加減で自分が望んだ程度に嫌な客になるために役立てていただきたい。そんな動機でこの記事を書いてみました。

ここで運転代行業というものをご存知ない方のために、簡単に説明をさせていただこうと思うのですが、「そんなの抜きにして早く本題に入れ!」とおっしゃる方は次の説明の段落を飛ばしてその次から読んでいただければと思います。なにしろ現代人は忙しく、長い前書きなど読んでいる暇はないのですからね。それこそ時間泥棒なんて言われちゃいます。
 
運転代行業とは、主に飲酒によって(他の理由による場合もありますが)自分でクルマを運転できない状態のお客様に代わってクルマを運転し、希望される場所までとどける仕事です。
お客様本人が運転代行会社に電話をかけて代行車を呼ぶ場合と、飲食店がお客様からの依頼を受けて任意の運転代行業者を呼ぶ場合とがほとんどです。お客様のクルマにお客様を乗せて、運転代行会社のドライバーがそのクルマを運転します。運転代行会社の社用車がトリップメーターで走行距離を計りながらお客様のクルマを追走し、到着地で集金したり領収書を切ったりします。その後お客様のクルマを運転したドライバーを乗せて、次のお客様のお迎え先に向かう。このような業態が一般的だろうと思います。そして私は先にも書いたようにお客様のクルマを運転するドライバーではなく、代行会社の社用車を運転するドライバーとして働いているのです。なぜお客様のクルマを運転しないのか? それはお客様のクルマを運転するには普通自動車第2種免許が必要なのですが、私は残念ながら1種免許しか持っていないというのがその理由のほとんど、というかすべてです。
 
さて、それでは注目のワースト1、運転代行の運転手が最も嫌がるお客様とは一体どんなお客様なのでしょうか?
それは、「なかなか店から出てこないお客様」です。
あれ、散々もったいをつけられた挙句にこんな結果で、拍子抜けしましたか? でもこれは私自身の独断と偏見ではなく、大方の運転手の意見でもあるのです。
例えば23:30にどこそこのお店に来てくれという依頼を受けて、その時間にお店に到着したとしましょう。運転手はお店に入り、到着した旨を店員さんもしくはお客様本人に伝えます。そして店の外でお客様が出てくるのを立って待っているのです。お客様にはすぐに出てきてもらいたいものです。この仕事をさっさと終わらせて早く次の仕事先に向かいたいという気持ちもありますが、それはお客様に早く出てきてもらいたい理由の二番目です。一番の理由は、店の前で家来か子分のように待たされているという屈辱的な気分を味わわされることが嫌だからなのです。今のような寒い時期の真夜中、吹きっさらしの駐車場で手持ち無沙汰に突っ立って待っているのはつらいものです。代行会社によってはお客様が出でくるまでクルマの中で待っているということもあるかもしれませんが、私が勤める会社ではそれはお客様に失礼にあたるとして、クルマの外でガタガタ震えなが待っていなければならないのです。
ガラス窓を通して見える店内は暖かそうで、楽しそうな男女が食べたり飲んだりしながら充実した時間を過ごしています。彼らは仕事が終わった後、仲間や家族や恋人とこの場所に集い、充実した時間を過ごしているのです。そのように過ごすだけの時間もお金もある人たちなのです。一方で運転代行の運転手たちというのは、私の知る限りではそれを専業でやっている人は少なく、昼間は別の仕事をしています。そして昼間の仕事が終わった後、つまり普通の人たちがこうやって過ごしている時間に運転手としてアルバイトをしている人が多いのです。夜中の3時や4時まで働いて、その日の朝7時に起きて会社に行かなければならないというのに。そんな生活をしなければならなくなった事情は人それぞれですが、お金に余裕があるのであれば、一部の奇特な人を除いてこんな生活を好んでするものではないのです。
 
お店に到着してからもう10分が経ちました。お客様はまだ出てきません。到着後7~8分が経過した時点で一度店内にお客様を急かしに入ることもあるのですが、それも結構気が引ける仕事なのです。せっかくの団欒に終止符をつきつけに行くのですから。酔いが回って上機嫌のお客様に「もう宴は終わりだ、さっさと出て来い」と告げに行くのです。特に何度も利用してくださっているお得意様であればなおのこと、お店から引きずり出すような行為はしたくありません。「こんなに待たせるんだったら23:30ではなく始めっから23:45に到着するように呼べばいいじゃないか」と思うのですが、こういうお客様は23:45に到着しても0:00まで出てこないものです。かくして運転手は寒風の中を立ち続けます。まるで何かの罰を受けてでもいるように。
自分があまりつらそうな態度を取っていないかどうかにも警戒が必要です。自分自身を客観視したときに、つらそうにしている自分の姿はとてもみじめに見えてしまいます。店の入口のドア一枚を隔てて天国と地獄。店の外では凍えた運転手が店内の光景を想像して羨ましがりながら、風の中をマヌケみたいにぼけっと突っ立って、ご主人様が出てくるのを待っている忠実な犬さながらに「待つ」という職務を遂行しているのです。「自分の姿が、眩しいショーウィンドウの向こうの決して手に入らない商品を、うらめしげに眺めている貧乏人のように見えないように」と彼はとても気を使います。そこで彼は寒そうに肩をすくめたりせず、昂然と胸を張って平気な態度を装うのです。
 
ようやくお客様が出てきました。待たせたことを悪びれる様子もなく、告げられた行き先は3Km未満の1000円で帰れる場所でした。「お客さん、あんまり運転手をいじめないでくださいな」。
横柄な口調で運転手に話しかけるお客様には何の悪気もありません。代行の運転手なんて待たせて普通、こっちは金を払ってるんだからという感覚なのでしょう。もしかしたら本当にそれが普通で、私の自意識や変なプライドの方が異常なのかもしれませんね。そして運転代行業以外の別のサービス業の場において、今度は私が客の立場として自分の言動に無自覚で、それに従事している人にとって嫌な客になっているかもしれないなとも思います。
例えばコンビニで時々雑誌の立ち読みをすることがあるのですが、その雑誌を買わずに帰る客というのは店員にどう映っているのでしょうか? 私はコンビニで働いたことがないので店員さんの気持ちは想像するしかないのですが、「タダで雑誌を読まれた」ことは「盗まれた」ことに近い印象なのでしょうか? 私にとっては少し立ち読みするくらいは「普通」のことで、だから何の悪気もなく立ち読みをしていたのですが、それは実は普通ではないことなのかもしれません。
無知ゆえに人に迷惑をかけながら生きている存在だってことを自覚して、だからお互いに許しあいましょうよってことですかね。
星空の下で、出てこないお客様を待ちながら、少し穏やかな気持ちでこんなことを考えたりしたのでした。
 
 

それって本当に便利なの? 実は不便かもしれない自動車の装備(その2)

前回に引き続き、自動車の一見便利に思える装備の矛盾点を突き、科学の進歩がもたらす弊害に警鐘を鳴らすシリーズの、待ちに待たれた? 第二弾(誰も待ってない)。

 

今日のテーマ「パワーシート」

 

パワーシートとは、簡単にいうとシートの前後の位置、背もたれの角度、座面の高さなどを、これもまたスイッチを操作するだけで任意のポジションに動かすことのできる装置です。一度合わせたシートポジションを記憶させておき、別の人が乗ってシートを動かしたとしても、また自分が乗るときにかつて記憶させたシートポジションを呼び出し、元通りの位置、角度、高さを再現できる機能が付いたものもあります。三通りのポジションを記憶できるパワーシートであれば、例えば家族三人が各々のシートポジションを記憶させておくことにより、各自が運転席に乗り込んだあと、すぐさま自分の最適なシートポジションにモーター様が動かしてくださる。高級車を中心に採用されている装備です。

これに対して手動式のシートがあります。これは従来からあったもので、シートを動かすための動力をモーターではなく人力から得るタイプのものです。この記事を書いている現時点では手動式の方がまだまだ主流です。

ではここで、パワーシートの功罪について考えてみようと思います。

まず功の方。

パワーシートは何といっても楽。しかも自動で動いてくれるシートにゆったりと身を委ねている姿は優雅。これが手動式の場合だと、特にシートを前方に動かす動作をしている人の姿は、見ていて少々どんくさい感じが否めません。人によってはかなり滑稽な姿になってしまうこともあります。クルマを運転したことのない方もいらっしゃると思いますので、イメージしやすいように描写してみましょう。

ある年配の女性が友人の軽自動車を借りて運転することになり、運転席に乗り込んだとします。しかし座ってみるとシートの位置が後ろすぎてペダル類に足がとどかない。ハンドルも遠い。そこで女性はシートを前方に動かそうと試みます。そのクルマのシートを前方へ動かすためには、シート前側の下に付いているレバーを引き上げてシートを固定しているロックを外し、その状態のままシートを前方に動かして希望した位置でレバーを下すという手続きが必要になります。イメージしていただけますでしょうか? 前かがみになって左手でシート下のレバーを引き上げつつ、おしりでシートを前に動かすのです。件の女性はこの通りの作業を当然おこなうのですが、そのときの身体の動き、これは美しい所作とは少しかけれたものとなってしまいます。左手でレバーを引き上げる姿は靴ベラを使わずにしゃがんで靴にかかとを入れようとする様に似ているし、おしりでエイヤッとシートを動かす姿はしゃくとり虫の進み方を彷彿とさせます。

この一連の動作は、身が軽く(尻が軽いのではない)、筋力と運動神経がほどほどにある主に若い人ほど、より少ない不格好さでやり切ることが可能なのですが、その反対の身体能力の持ち主は、優美さや上品さをあきらめなければならないでしょう。

ここで妙齢の女性ではなく、わざわざ年配の女性を例に出したことには他意はなく、その良く言えばユーモラスな動作を強調したかったがためなのです。悪しからず。

ピカピカに磨かれたメルセデス・ベンツの運転席に颯爽と乗り込み、華麗に足を車内に滑り込ませる。運転席のドアは静かに閉まる。その後例のしゃくとり虫的動作をおこなわなければならないとしたら・・・。少し残念な気持ちになるのではないでしょうか? ほんの一瞬の動作ではあるのですが、たとえ一瞬でも嫌だなと思う方のためにパワーシートはたのもしい味方になってくれるでしょう。

今度は罪の方。

その一つ目はシートの動きが遅いということです。ときにはシートを一番後ろまで下げたい、あるいは一番前まで出したいということがあるものです。シートの下に何かを落としてしまって拾いたいなどという場合なんかがそうですね。そのようなときにパワーシートは動きが遅く、せっかちな人はしびれを切らせてしまいます。手動式なら一秒で移動させられるのに。

二つ目はパワーシートはパワーウィンドウと同様に故障することがあるということです。故障して動かなくなったパワーシートを、経済的な理由から修理しないで乗っている人をたまに見かけますが、微妙に位置のあっていないシートでの運転は非常に快適さをそこなうもので、いくら乗り心地の良い高級車であったとしても、シート位置不適合による違和感を相殺することはできません。

さあどうでしょうか? パワーシートVS手動式シート。勝敗をつける必要もないしそんなことできもしませんが、私が乗るなら手動式シートの方を選びますね。パワーシートのクルマに乗る人物像は、修理代が払える経済力があって、遅いシートの動きにもイライラしないだけの時間の余裕まで兼ね備えた人。いつかはそんな風になってみたいものです。今の私にはお金がない上に時間もない。

では今日はこの辺で。

 

 

 

それって本当に便利なの? 実は不便かもしれない自動車の装備(その1)

最近の自動車って本当に便利になりましたね。特に注目すべきなのは室内装備の便利機能の数々。一昔前なら手を使っておこなっていた動作を、今では指一本でできるようになってきています。

しかし! 人間の労力を限りなくゼロに近づけていこうというメーカーの努力には一定の敬意を表すれども、「そんな装備って別になくてもいいんじゃないの?」「逆に不便なんじゃない?」という疑問をいだいてしまうケースもあるのです。

今日はそんな「別になくてもいいんじゃねぇ」的な装備をやり玉に挙げ、多少の嫌味と屁理屈で味付けして書いていく企画の第一弾です。お忙しいところを恐縮ですが、どうぞ3分ばかりお付き合いくださいませ。

 

今日のテーマ「パワーウィンドウ」

 

大昔、クルマの窓の開閉はハンドルを手でクルクルまわしておこなっておりました。今でも軽トラックや、一部のクルマの一部のグレードで、そのなつかしい昭和時代のノスタルジーに浸ることができます。しかし現在では、「パワーウィンドウ」という素敵な名前で呼ばれる快適便利な装置が台頭し、旧式のクルクルハンドルを博物館送りにしてしまいました。

ここで、パワーウィンドウをご存じない方のために簡単に説明を加えておきますと、この装置はパワーウィンドウスイッチを「押す/引く」あるいは「下げる/上げる」ことによって、電動モーターの力で窓ガラスを上下させるものなのです。

さて、ではこの偉大なる発明が我々に一体どんな恩恵をもたらしたのか? その最大のものは、腕の筋肉を疲労させてハンドルを回さずとも、ひとさし指一本で目的を達成させられるようになったということです。これは便利!パチパチパチ(拍手)。生活していく上で人が耐えしのばなければならない数多の苦痛の一つから、人類は解放されたのです。「楽をしたい」。その思いが我々の文明をここまで発展させてきたのですね。

またもう一つ、副産物的な結果として、パワーウィンドウがクルマのインテリアデザインの洗練に寄与したことも挙げておかなければならないでしょう。ドアの内側に不格好なハンドルが付いているよりも、スタイリッシュなパワーウィンドウスイッチが付いていた方がカッコいい。なかにはスモールランプに連動してスイッチ部分がブルーやオレンジ色に発光し、夜間の室内においてその存在を主張するようなナルシスティックなスイッチまであるのです。

しかし、逆にこの便利な機能によって我々が失ってしまったものは、はたして無かったのでしょうか?

「腕の筋肉を失った」などというくだらない冗談を言うつもりはありません。まじめな話をしますが、窓を自分が開けたいと望む幅ぴったりに開けにくくなってしまいました。運転席側のパワーウィンドウにオート機能が付いているクルマが多いですが、これなどはスイッチへの力の入れ具合で、ガラスが下まで下がり切ってしまったり、上まで上がり切ってしまったりしてしまいます。ですので、例えば上から2.5センチだけ窓を開けたいという希望を叶えるために、何度もやり直さなければならないことがあるのです。このやり直しは結構人をイラつかせます。テクノロジーに愚弄されているような気がして、窓を上げたり下げたりと悪戦苦闘している自分の姿に自分自身で羞恥を感じてしまいます。本来生活を便利にするための技術であるはずが、その技術を使いこなすために新たな別の種類の労力を強いられる。この本末転倒の事態に直面して、人のための技術ではなく技術のための技術、ひいてはメーカーの独りよがり、便利の押し売りといったものを感じてしまうのです。

窓ガラスを狙った位置ぴったりで止めるには、パチンコ店にあるスロット台の「目押し」のような熟練が必要とされ、素人にはほぼ不可能との意見もあります(知人の自動車販売店員Aさん談)。

しかしこれがクルクル式の窓であれば、上から例えば2.7センチぴったりに開けることだって叶わぬ夢ではないのです。

パワーウィンドウのもう一つの短所は、しばしば起こる故障です。修理するにあたっては、部品代と交換工賃で結構な出費を覚悟しなければなりません。しかし手動式開閉装置であれば、故障のリスクはぐっと下がります(同氏談)。

さあ、手動式と電動式、一体どちらがいいんでしょうかねぇ? 私は手動式でいいですし現に手動式のクルマに乗っています。もしかしたら、18年も昔に誕生したポンコツの軽自動車に乗っている私のヒガミがこんな記事を書かせたのでしょうか?

最後に手動式の良いところをとどめにもう一つ。それはイグニッションキーをオンにしなくても窓の開閉ができるという点です。パワーウィンドウの場合はいちいちキーをオンにするかエンジンをかけなければ窓ガラスは動いてくれないんです。

もうこれだけ挙げれば手動式の圧勝ですね。第一、ハンドルを回すことでどれだけ疲れるっていうんですか?!

 

「得意料理はカレーです」という男

「得意な料理は何?」と女性に尋ねたときに、「カレー」と答える人はあまりいないのではないでしょうか(あまりこんな質問をしたことがないのであくまで想像ですが)?

ところが男同士で料理の話になったときに、カレーが得意だという人はよくいます。そして自分の作るカレーがいかにうまいかや、こだわりの調味料、自分オリジナルの煮込み方などなど、嬉々として語り始める人は多いのです。そんな話を聞くことが別に嫌ではなく、ときにはむしろ愉快なこともあるのですが、心の中ではやはり、「あぁ、こいつもやはりカレーか。カレーしか作れないんだな」と思ってしまいます。イヤミな奴ですね。

カレーは誰にでも作れます。そして失敗することも少ない。今までにおいしくないカレーなんて食べたことがありません。小学生がキャンプのときに焚火で作ったカレーだってとってもおいしいのです。少し焦がしてしまって、失敗しちゃったなと思うときだってありますが、それでもやはりカレーとはおいしいものなのです。

そんなカレーが自分が自信を持って作れる唯一の料理であり、なおかつ得意料理だという男。女ならこんな男を「かわいいな」なんて思うこともあるのかもしれませんが、男である私からしてみると、「僕はカレーしかつくれないんだけど、けっこうおいしくできるよ。簡単だしね」などと軽く言ってくれた方が気楽に話せるのになぁ、などと思ってしまいます。

「カレーにはぜったいにシーフードは欠かせないよね」とか、「タマネギを飴色になるまで炒めてさ」などと言われると返答に窮します。「飴色」ってどんな色ですか? 炒めたタマネギを形容する以外には決して使わないくせにさ。

「ぜいたくにリンゴを二つもすりおろして」とか「トマトをつぶして入れるのが隠し味なんだよね」とか、出てくる出てくる。

みなさんもぜひ身近な人にきいてみてください。「得意料理」→「カレー」→「こだわりのレシピ」という流れで話は大盛り上がり間違いありません。

しかし、かくいう私も実はカレーが大好き。そしてそれしか作れず、また得意でもあるのです(注・「作れず」というのは他人に自信を持ってふるまえるレベルではないという意味で使っています。自分が食べる分についてはいろいろ作ることができるのですよ。なにしろ私はなんだって食べますからね)。

そう考えれば「私のカレー自慢」も、目を細めて寛大な気持ちで聞くべきなのでしょう、きっと。

実際に彼の手作りのカレーを食べるわけではないのですから。

ところが、話の成り行きで本当に食べることになってしまったことが何度かあります。

彼の家に招かれ、本人のありがたい解説付きで調理を間近に見学し、彼のカレーを世界最高のカレーたらしめている秘密を私だけに惜しげもなく伝授していただいたのです。

例えば「バー〇ントカレーの中辛とジャ〇カレーの辛口とを何対何の割合で入れる」だとか「ジャガイモを小さく切っちゃう人が多いけど、うまいカレーにはジャガイモはぜったいに大きめ! 煮込むのにその分時間がかかるけど、その待っている時間がまたカレー作りの醍醐味なんだよね」とか「豆乳が」だの「ハチミツが」だの「月桂樹が」だの「タカノツメが」だの「あー」だの「こー」だの。

そしてついに完成。いよいよ食事です。

確かにおいしいのです、あたりまえですが。

「どう? どう?」とひっきりなしにきかれて「おいしいね おいしいね」とひっきりなし。

3分ごとに「どう?」「おいしいです」

3分ごとに「どう?」「おいしいです」

「おかわりは?」「おかわりください!」

「もう一皿どう?」「いただきます」あぁ。

 

「おいしかった」

「今日は本当に最高の時間を過ごせました」

「僕も今度作ってみようかな」

「さっきのレシピ、メモさせてもらっていい?」

 

   「食材は良いものを選ばなきゃだめだよ」

   「肉の代わりに魚を使えるようになれば上級者」

   「何といってもカレーはスパイスがキモだからね」

   「やっぱ、料理は数をこなさなきゃだよ」

 

「なきゃだよ、だって。バカだよ」

「早く帰りたい」

「食べ過ぎて吐きそう」

「さようなら」

 

カレーは自分の家で自分の好みで作って、コンビニで買った500円くらいの赤ワインを飲みながら黙って食べるのが好きということを再認識した冬の夜なのでした。